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読んだ本のこととか。できることからこつこつと

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[結城 浩] 数学ガールの秘密ノート 丸い三角関数 を読んだ  

category: 読書 tag: 結城浩 
数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数
(2014/04/25)
結城 浩

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「僕」と三人の数学ガール(ミルカさん、テトラちゃん、ユーリ)が「三角関数」をテーマに楽しい数学トークを繰り広げます。 サイン・コサインの基本から始まって三角関数の加法定理や回転行列、リサージュ図形、円周率の求め方などなど楽しく問題に取り組んでいきます。

数学ガールシリーズはガロア理論まで読みましたが、正直なところ難しいところはやはり難しかったです。一方、こちらの秘密のノートでは高校生の頃習った三角関数がテーマになっていて基本的なところが書かれているので、無理なく読み進めることができました。

数学の教科書などを読んでると当然ですが、難しそうな名前の公式や過去に証明された高尚な定理などが自分の理解の追いつかないうちにぶわーっと展開されたりします。もちろん理解しながらきっちり読めればいいのですが、どうしても曖昧な理解のままで読み進めてしまったり、いつの間にかわからなくなってたりといったことが多々あります。まるで綱渡りをしているような感覚で読み進めなければならなくなることもしばしばです。
しかし、数学ガールの素晴らしいところは数学で当たり前のように出てくるそれらの難しそうな名前のついた公式や定理、それらは一つ一つしっかりと理解していけば決して難しいことではないんだよということを教えてくれることだと思います。自分のまだ知らない概念に初めて出会ったとき、どうやってそれを自分の理解に落とし込んでいくか、どうすればその概念の本質を見つけられるのか、そういったところを丁寧に教えてくれるのが数学ガールの魅力だと思います。

数学ガールの登場人物たちの会話に耳を傾けると、高校の頃の教科書には無味乾燥に書かれていた公式や数学記号の数々が、実は血の通った表現豊かな一つの言語なのだと気付かされます。そしてそれを学ぶことの楽しさを登場人物たちの楽しい会話とともに参加することができます。

ところで今回の物語にはリサージュ図形と呼ばれるものがでてきます。今回はそのリサージュ図形をProcessingという図形を簡単に描画してくれるプログラミング言語があるので、試しに描画してみました。
x, yを以下の式で表します。
(x, y) = (cos(nθ), sin((n + 1)θ + α))
マウス左クリックでnに1が加算され、右クリックで1が減算されます。また、αにはマウスのx座標が入ります。描画範囲内でクリックしたりマウスを左右に移動させてみてください。リサージュ図形が描画されます。

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次はαをなくして、x, yを以下の式で表して、nの値を少しずつ増やしてみました。
(x, y) = (cos(nθ), sin((n + 1)θ))
マウスクリックで描画が始まります。

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次第に織物が織られていくようで、見ていて面白いですね。数学ガールにはこういった面白いものがたくさん詰まっているので大好きです。
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[アーサー・C・クラーク] 2010年宇宙の旅 を読んだ  

category: 読書 tag: アーサー・C・クラーク 
2010年宇宙の旅〔新版〕2010年宇宙の旅〔新版〕
(2013/07/17)
アーサー C クラーク、伊藤 典夫 他

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木星軌道上に浮かぶ謎の物体<モノリス>にボーマンが接触してから10年。2010年、宇宙船アレクセイ・レオーノフ号は地球を旅立とうとしていた。10年前に遙か木星系で宇宙飛行士4人が死亡、1人が失踪した事件を調査し、遺棄された宇宙船ディスカバリー号を回収することがその任務だった。はたして真相は究明されるのか?
モノリスに触れたボーマンはいったいどうなったのか? そしてモノリスの本当の目的とは……。


設定が前作の2001年とは少し違ってるのですね。一番大きな違いはディスカバリー号とモノリスのいる場所です。前作の2001年では土星の月ヤペタスにモノリスはいたのですが、今回の2010年では木星衛星系にいます。このあたりは映画版2001年の設定を優先したという旨が冒頭の作者のノートに書かれています。なので映画を観ている方でしたら、すんなり設定を飲み込んで読めると思います。

それにしても前作であれだけ綺麗に物語は締めくくられていましたが、それでもやっぱりスターチャイルドになったボーマンのその後やモノリス(の背後にある意思)の目的、遺棄されたディスカバリー号などなど気になるところはたくさんあります。まだまだ語りつくされていない謎がたくさんあるのですが、それらについて2010年ではきっちり語ってくれます。

スターチャイルドになったボーマンは始めのうち、結構好き勝手やっているように思えます。彼の視点は時間的にも空間的にも縛られていないのであっちへ行ったりこっちへ行ったりとなかなかせわしないです。でも、ちゃんと与えられた役割をこなしているんだな、というのが後半になってわかってきます。
今回はHALの設計者であるチャンドラ博士も活躍しますし、もちろんHAL9000もまた登場してくれます。そういえばHALの妹でSAL9000というコンピュータも出てくるのですが、彼女は博士に「わたしは夢を見るでしょうか?」と印象的な名言を残します。このあたりのコンピュータとの会話はなんだか詩的でいいですね。

今回は前作の2001年とはところどころ対照的になっているように感じました。前作ではほとんどがボーマンの一人語りだったのですが、それに対して2010年では宇宙船の乗組員が10人近くいて結構賑やかに会話しながら旅をします。宇宙船や惑星などのSF的な描写はもちろんありますが、それ以上に人間描写や感情面の方がより多く描かれています。
また、前作では反乱を起こしたHALでしたが、今回は人間側も彼に出す命令に矛盾がないよう慎重にしているのでHALも協力的に任務をこなします。HALが任務をこなすシーンは前作で反乱を起こしているだけに緊張感があります。HALが命令に逡巡するところなんかは読んでいて手に汗握ります。

物語の最後でモノリス(とその背後にある意思)の真意が前作以上に掘り下げて語られます。また、なぜモノリスのいる場所が土星軌道上から木星軌道上に変更されたのかが(それがただ単に映画の設定を引き継いでいるという以上に)わかります。
それにしても前作以上に、本当に宇宙旅行をしたような気にさせてくれますね。もしかしてクラークは宇宙旅行に行ったことがあるのでは? そんなことすら感じさせるほどです。
今回も最高のオデッセイでした。
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[アキリ] ストレッチ を読んだ  

category: 漫画 tag: アキリ 
stretch

強気なOL慧子と、ちょっと天然な大学生の蘭。東京ではじめたルームシェア生活。ストレッチしたりしなかったり。ゆるゆるとほぐれながら繰り広げられる二人の日常。

WEB連載しているので最新話をすぐに読むことができます。ほとんどが一話完結で日常のお話なので途中からでも読み始められます。今はまだ一話から三話も公開されていますね。
第一話はこちらから。

基本的に二人の女性がストレッチをしつつ何気ない会話をしているだけなのですが、面白いです。ちょっと性格きつめの先輩と奔放な性格の後輩コンビの二人はいい感じにバランスが取れていていいですね。会話もテンポが良くてときどき笑わせてくれます。

ストレッチだけでなく、二人の関係にも着目して話が進んだりするので、ときには心が和むようなちょっといい話もあります。心身ともにリラックスしながらほぐしていけるような作品です。

最近体動かしていないなぁと思ったら読んでみてください。きっとストレッチがしたくなりますよ。
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HAL 1巻 (Gum comics)HAL 1巻 (Gum comics)
(2012/08/01)
あさり よしとお

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いつもの通学路。ふと気がついたら、ビルの屋上に変な研究室があった。とある街のとあるビルの屋上に在る奇妙な研究所「HAL(はいぱぁ あかでみっく らぼ)」。そこでは胡散臭い博士がなにやら怪しい実験をしているらしい。ウソで塗り固められた科学の面白さ、サイエンスコメディの決定版!
※このマンガには一部に真実が含まれている場合があります


「生命の不思議」とか「宇宙」「ロケット」などなど科学の話題についてあんまり難しく考えないでゆるーく楽しく読めます。連載当時が2001年ごろなので、ネタが結構古かったりしますが、今読んでもところどころ再発見があって面白いです。各話の最後に解説があって、そこに書かれている小話も豆知識として面白いです(少し内容が濃い気もしますが)。
博士の派手な実験に付き合わされて助手の女の子が毎回のごとくひどい目に合うところは、いつものあさりよしとおですね。

基本的にインチキ科学をウリとしているので、話半分に読むのがいいと思いますが、読んでいるうちに本当にウソと真実の境がわからなくなったりします。明らかにおかしい話とかしてるときもあれば、あれ、これは本当だったかな?というような話もあります。そこから自分で調べて正しい知識を学んでいくのが本書のねらいなんでしょうね。科学に興味を持って自分で調べようという気にさせてくれるのはさすがです。面白い話がたくさんあるので読めばきっと自分で調べてみたくなると思います。
水上歩行する二足歩行ロボットとか、恐竜の飼い方とか、夕日の赤が実は「赤方偏移」だった(?)とかけっこう笑える話があります。ゴジラの背ビレの青い光はチェレンコフ光だったのですね。
とにかく科学を面白おかしくウソで味付けして、ときに少しだけ真実を混ぜるというのはなかなかスリリングで楽しめます。

ところで「独壇場(どくだんじょう)」は「独擅場(どくせんじょう)」が実は正しかったのですね。本書で初めて知りました。
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[九井諒子] ひきだしにテラリウム を読んだ  

category: 漫画 tag: 九井諒子 
ひきだしにテラリウムひきだしにテラリウム
(2013/03/16)
九井諒子

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自分に優しい脳内裁判、ノベルダイブ、愛想のない社長令嬢、AIの恋あるいはバグ、神を殺した男、彼氏もしくは彼女の特殊な性癖、お金持ちには向かない仕事、植物の気持ち、太陽系から見た彼女と僕の距離、引き出しの中のテラリウム、狐の嫁入り、サンタクロース派遣会社、などなど33編のショートショート。

10ページ未満のショートショートが33編詰まっています。中には2ページほどのお話もありますが、それらの短いページ数の中にきらりと光るアイデアがしっかりと詰まっています。いろんなアイデアが詰め込まれているので読んでていい刺激になります。本当にこの作者はお話の発想からオチまでの持って行き方がうまいですね。
今回はファンタジーだけではなく、日常からSFまで、動物から植物そして細菌まで、あるいは異国の訪問記と幅広く、ジャンルの枠に収まらない世界観が軽やかに展開されていきます。

ときどきドキッとするくらいかわいい女の子が出てきたりします。その可愛さは、表情だったり仕草だったり佇まいだったりするのですが、ショートショートの中でもこんなに魅力的なキャラクターが表現できるのかと驚きます。

毎回切り込み方が斬新で鋭く、飽きさせない展開に持っていくのはすごいですね。
あとところどころ入ってくるメタ視点、唐突な視点切り替えなんかもうまく使われてて面白いです。

僕はとくに「代理裁判」「ノベルダイブ」「えぐちみ代このスットコ訪問記」「春陽」「パーフェクト・コミュニケーション」「スペースお尺度」あたりがお気に入りです。
どのお話も独自の切り込み方で、雰囲気がとても好きです。

こちらから四作品を試し読みすることができます。興味のある方はぜひ。
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[九井 諒子] 九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 を読んだ  

category: 漫画 tag: 九井諒子 
九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)
(2012/10/15)
九井諒子

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ふたつの戦争状態にある国の国境で子育てをはじめる竜。互いに理解しあえない人魚と少年。山の神様に学業成就を祈る小学生。もう一人の自分に悩む大学生。命を吹き込まれた絵は何を思うのか。親を思う子の気持ち、子を思う親の気持ち。トホホな超能力の使い道とは。
親と子、子と親、「絆」がテーマの七つの短編集。


前回の「竜の学校は山の上」に次ぐ九井諒子さんの短編集第二作です。
今回はページ数がそれぞれ同じくらいの短編が7つ収録されています。
前回同様、九井諒子流のちょっと独特なファンタジー世界が広がります。竜、人魚、神様、狼男、そして不思議な超能力までいろいろな世界観が展開されますが、でもその根底には「絆」というシンプルなテーマがあります。日常と非日常が混在した世界で、それぞれがどう関係を保っていくのか、登場人物たちはその答えを探し求めます。

どの物語も途中にクスリと笑えるところがあって、うーんと考えさせられるところがあって、そして最後には安心させてくれる救いがあります。どの物語もオチが綺麗でスッと後を引かない清涼感がありますが、しかし一度この世界観に引き込まれると、読む手がとまらず、次々とページをめくって読まされてしまいます。

僕はとくに「わたしのかみさま」が好きです。
中学受験を控えた小学生の女の子。模試でひどい結果を出してしまい家に帰れず逃げるように小山へ登って行くと、そこにはなんと魚の姿をした神様が。彼女はその神様に受験の合格を祈願するが……。
初めての受験に不安になる彼女の気持ち、受験を経験したことのある人なら共感できるところがあると思います。もしも受験に失敗したら、落ちてしまったら……そんなことを考えると今まで頑張ってきたことが無駄になってしまうかも、と不安になります。
女の子はそんな不安な気持ちをお父さんに打ち明けます。

頑張ってもだめだったらぜんぶ無駄になっちゃうの?
もし全部だめだったとしても私はちゃんと私になれる?


「だめだったとしても私はちゃんと私になれる?」という女の子の気持ち、すっごいよくわかります。合格するかどうかわからない不安な未来に対して、もし失敗したとき自分にどう変化があるのか。努力が報われなかったときはどうすればいいのか?
でもお父さんはそんな幼い娘の気持ちを汲んで、やさしく励ましてくれます。
このお話では神様が登場したりしますが、やっぱり親と子の絆のお話ですね。やさしい家族に心温まります。

本書にも収録されている「子がかわいいと竜は鳴く」の短編が一話まるまる公開されています。
九井諒子「子がかわいいと竜は鳴く」試し読み
興味のある方はぜひ。
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[映画] かぐや姫の物語 を観た  

category: 映画
かぐや姫の物語 [Blu-ray]かぐや姫の物語 [Blu-ray]
(2014/12/03)
ウォルト ディズニー スタジオ ホームエンターテイメント

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竹の中から生まれた可愛らしい赤ん坊は、すぐさま育ち、またたくまに美しい娘へと成長しました。育て親の翁は彼女の美しさのあまり、高貴の姫として山から都へ移り住みます。都へきてからもますます美しくなった彼女は「かぐや姫」と名付けられ、噂を聞きつけた5人の貴公子たちに求婚を迫られます。しかしかぐや姫は求婚者たちに無理難題をあたえて彼らを振ってしまいます。
それから月日は流れ、かぐや姫は満月を見るたびに悲しみにくれるように。翁がその理由を聞くと、次の満月の夜、迎えにくる使者とともに月へと帰らねばならないという。
彼女は何を思って生きてきたのか? なぜ地球へきたのか? 罪とは? そして彼女にとっての幸せとは……


この映画を観た後に、高校の頃にやった古文の竹取物語をやっていたら、もっと興味を持って勉強できたと思います。暗唱とかやらされたのを覚えていますが、当時は覚えるのに一苦労でした。今だったらこの映画を見ているうちに覚えてしまいそうです。

竹取物語がここまで美しく、儚いお話だとは知りませんでした。高畑勲監督だからこそなのでしょうが、最高の映画です。美しい少女、かぐや姫の喜怒哀楽、彼女の嬉しさも悲しみも喜びも、そして怒りさえここまで見事に表現して映像の中に落とし込んでしまうというのは本当に素晴らしいと感じました。ここまでかぐや姫の感情が痛いほど伝わってくるということに驚きです。こちらまで笑ったり喜んだり怒ったり、そして泣いてしまいます。アニメーションの向こうから彼女の息遣いが聞こえてくるようです。蝶のように美しく、猫のように奔放で、しかしどこか儚げな彼女は何を感じ、何を思って生きてきたのか?

琴の音色がここまでマッチする作品もそうそうないと思います。かぐや姫が琴を弾いているシーンはいつもの奔放な彼女とは違い、凛々しく、優雅で、とても美しいと感じさせます。
あと、かぐや姫は気を許しているときと、人前などのときとで声のトーンが違うのですが、その切り替えも素晴らしいですね。いつもの気を許しているときの声から一変して、急にぞくりと感じさせるような冷たい声になるのです。求婚者たちに次々と無理難題を言いつけて振っていく場面はその冷淡な声にぞくぞくさせられました。

最後の場面で月から使者が迎えにくる場面は泣かされますね。仏のような表情のない使者は「生」を超越したもののような存在に感じられます。
はたして彼女はなぜ地球へきたのか? 罪とは? 幸せとは? この物語はそれらについて強く語りかけてきますが、すべてかぐや姫が答えてくれます。おそらく月には悩みも悲しみもないのでしょう。彼女はただ「生きたい」と願っただけなのですね。
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[角野 栄子] 魔女の宅急便 を読んだ  

category: 読書 tag: 角野栄子 
魔女の宅急便 (角川文庫)魔女の宅急便 (角川文庫)
(2013/04/25)
角野 栄子

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お母さんは魔女、お父さんは普通の人、そのあいだに生まれた一人娘のキキ。今では魔法の力も弱くなり、数もめっきり少なくなってしまった魔女たちが生き残っていくために、十三歳になるとひとり立ちをするという決まりがありました。満月の夜、黒猫のジジを相棒にほうきで空に飛びたったキキは、不安と期待に胸ふくらませ、コリコという海辺の町で「魔女の宅急便」屋さんを開きます。いろいろなお届け物をしていく中でキキはたくさんの人たちに出会い、わくわく、どきどき、ときにはいらいらしながらも次第に街にとけこんでゆきます。

一つ一つが完結した短いお話になっているので、気楽に読むことができます。
難しい言葉も言い回しも使われていませんが、キキの心情がとてもよく伝わってきます。やさしい文章で語りかけてきてくれるので、終始癒されっぱなしでした。表紙のイラストも素敵です。

友達も知っている人もいない街でひとり立ちしていくなんてそうそうできることじゃありません。若干13歳の女の子ならなおさらです。キキも最初は期待に胸を膨らませていますが、やっぱり不安そうな一面も見せます。それでも少しずつ新しい街で自分の居場所を見つけていく彼女の姿にはとても勇気をもらいます。

パン屋さん夫婦や飛行クラブのトンボ、森に住んでいる画家などジブリアニメでおなじみのキャラクターたちも登場しますが、ストーリーはけっこう違っています。大きな盛り上がりや見せ場があったりするわけではありませんが、のんびりゆっくりとキキやジジ、街の人々との楽しい時間を過ごせます。

新しい街でいろんな人たちと出会い、いろんな経験をして一年経ったころ、キキは里帰りをします。そこでキキは母親にこう言います。

かあさん、あたしちょっと考えたんだけどね、魔女はね、ほうきにばかり乗って飛んでちゃいけないんじゃないかって思うのよ。そりゃ、おとどけものはいそぐから、飛ぶのはしかたがないけど……でもときどきは歩いたほうがいいんじゃないかしら。だってほら、歩くといろんな人といやでも話すことになるじゃない? おソノさんに会えたのも歩いていたからだし……あのとき悲しまぎれに飛んでたら、どうなってたかわからないもの。反対にむこうだって、魔女を近くで見れば、鼻がとんがって口がさけてるんじゃないってわかるでしょ。それにお話もできるし、おたがいわかりあえると思うの……


やっぱりお互いに面と向かって話し合うのが一番理解し合えるのでしょうね。
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[九井 諒子] 竜の学校は山の上 九井諒子作品集 を読んだ  

category: 漫画 tag: 九井諒子 
竜の学校は山の上 九井諒子作品集竜の学校は山の上 九井諒子作品集
(2011/03/30)
九井 諒子

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魔王を倒し終わった後の勇者の憂鬱。
自分が何者であるか忘れてしまった冴えない青年。
馬人(ケンタウロス)は今日も休むことを知らない。
自由に飛ぶには狭すぎるこの世界。
誰かに必要とされなくても、近くで見守ってくれる人がいる。
素敵な9編の夜伽話。


9編の短編が収録された短編集です。10ページほどの短いものもあれば、50ページ前後の比較的長いものもあります。どの物語も竜や、魔物、魔王、馬人、翼の生えた女の子などファンタジーの登場人物たちが出てきますが、うまいこと現実に溶け込んでいてやけにリアルな非日常を感じさせてくれます。単純な勧善懲悪に終始するのではなく、もう少し踏み込んだ物語が多く、読み終わった後はしばし考えさせられます。

主人公にのみ視点を固定するのではなくて、他の登場人物たちの心情も描かれていてしかもその視点の切り替えがうまいです。なるほどこのキャラクターはこういうふうに考えているのか、とそれぞれ深みのあるキャラクターに魅力を感じます。

僕はとくに「現代神話」「進学天使」が好きです。
「現代神話」ではとにかく働き者の馬人(ケンタウロス)と猿人(普通の人)たちの日常が描かれています。馬人はとても働き者でたとえ会社が代休の日でも出社してしまうくらい、とにかく怠けることができない。働き者なのはありがたいのだけれど、普通の人たちからしたら彼らのように働く体力はないので、比べられると結構肩身の狭い思いをすることもしばしば。
普通の人たちから見たら馬人は働くことを楽しんでいるように見えますが、馬人の彼らは、自分たちは働くことしかできないと言います。
馬人の青年は仕事中に公園で休憩している同僚(普通の人)に「僕は猿人に生まれたかったです」と話します。

テレビ見ながらこたつでうたた寝したり
学校サボってパチンコ行ったり…
ぼーっと公園のベンチで物思いにふけってみたかった
怠けるってミキさんが思ってるよりずっと素敵なことですよ


休まずに働き続けられるってことは羨ましいことのように思えますが、ときにのんびり怠けることができるっていうのも一つの大切な能力なんでしょうね。なにごとものんびりが一番です。

「進学天使」は翼の生えている女の子と普通の男の子のお話で、日本の街並みは空を飛ぶには適していないからといって、女の子は海外留学を勧められます。それを後押しする友達もいますが、本人は同級生のある男の子のことが好きでずっと一緒にいたいと思っています。男の子のほうも最初は彼女が留学してしまうのを引き留めようとするのですが、彼女が空を飛んでいる姿を見てあることに気付かされます。
ラストの切れ味はこの短編が一番だと感じました。空を飛ぶっていうのはやっぱり憧れがあります。
この切れ味は長編にはなかなかないと思います。短編だからこそですね。

どの物語もストーリーの途中ももちろんすごく面白いのですが、最後のページ、最後の一コマを見たときの余韻が素晴らしいです。こんな素晴らしい読後の余韻を残してくれる物語が9編もあるのですから、大満足です。
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日本アニメ(ーター)見本市が面白い  

category: 雑記
日本アニメ(ーター)見本市
一週間ごとに短編アニメーションが公開されていて、どの作品も魅力がいっぱいで面白いです。
日本アニメ(ーター)見本市は、スタジオカラーとドワンゴが共同企画して立ち上げたもので、オリジナルやPV、MUSIC映像などジャンルを問わず数々のアニメーションが発表されています。

公式ページはこちらから「日本アニメ(ーター)見本市

作品はどれも10分未満の短編なので、気軽に観ることができます。が、どの作品も魅入ってしまうほどに面白いです。アニメーションの持っているかっこいい動きや気持ちの良い動き、世界観の見せ方が一つ一つの作品でよく表現されていて、気がつくと時間が経っていて見終わっています。どの作品も声優は山寺宏一さんと林原めぐみさんが担当されていて、二人の演じるいろんなキャラクターの声を聞くことができます。

第3話の「ME!ME!ME!」と第6話「西荻窪駅徒歩20分2LDK敷礼2ヶ月ペット不可」が特に好きです。
「ME!ME!ME!」は音楽PVのような映像でなにやら妖しげな女の子がいっぱい出てきます。倒錯した雰囲気が醸し出されていて、映像だけで酔ってしまいそうな眩暈を感じさせてくれます。
mememe
mememe
mememe

「西荻窪駅徒歩20分2LDK敷礼2ヶ月ペット不可」は小さくなってしまった女性の慌てるダイナミックな動きがとっても素晴らしいです。
2ldk
2ldk
2ldk
どちらの作品も気持ちの良い動きで見てて飽きません。
公式ページで配信されているので興味のある方はぜひ観てみてください。

あと、この企画に関する林原めぐみさんのコメントがあるのですが、その受け答えが印象的でした。「作品によって全て違うスタッフで、それぞれ全く違うテイストのアニメ。意気込みは?」という質問に対して、

意気込みなんてもっちゃダメです。
その作品ごとの監督の目指すところに添える用に映像を邪魔せず、映像に溶けるべく?常にノープラン。つっても私の声は良くも悪くも、溶けにくいのですが…。
「こうして欲しい」と言われれば、「こうする」
「やっぱりこんなで」と言われれば、「こんなにする」
ある意味そこは、EVAで慣れっこですから…。
驚かない
怯えない
悩むことに悩まない
追い込まない
ポイントを、ぼんやり出来るだけ、的確に探します。
目指しながらノックしてればヒットするだろう…と。


「悩むことに悩まない」というのはいい言葉ですね。ベテランとしての重みが感じられます。こういう考え方はぜひ見習っていきたいです。

日本アニメ(ーター)見本市、これからもどんどん作品が公開されていくようです。毎週の楽しみが一つ増えました。
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